執筆日:2023年12月6日
投稿日:2023年12月6日
最終更新日:2024年1月10日
タップできる【目次】
前書き
この記事は、Discordのコミュニティ運営ノウハウとかBOTの使用方法に関して、ウェブ上の投稿量が十分ではない現状を鑑みて、Discordサーバー運営経験者のわたしが自身の経験とDiscord Moderator Academyにおける体系的な記事から得られた知見を投稿することを目的としています。
というのも、こと日本のDiscordサーバーに関しては、大した運営ノウハウも持たず、恣意的で独裁的、全体主義的な運営者が跋扈しているのです。
またDiscordのサーバー管理手法を共有するコミュニティでも、こと日本語圏だと特にモデレーション・ケースに対するノウハウは、例えば嫌いな人を理由も告げずBANするなどといった、小中学生レベルに毛が生えた程度のものが多数、というのが実態だと感じます。
そのため、わたしは海外のModerationノウハウ共有サーバー『Discord Moderator Training Facility』のモデレーター養成プログラムに参加したり、Discordの公式記事Discord Moderator Academyをすべて読んで体系的な知識を習得。
その上で、自身が運営するサーバーの改善を実施してきました。
そのサーバーの人数は執筆時点で2万7000人に到達していますが、この人数でも大きな揉め事なく安定的に運用できている点において、他のサーバーに負けないノウハウを蓄積している自負があります。
やや扇動的な前書きになってしまい恐縮ですが、興味を持たれた方、そのノウハウが本当に正しいのか見定めたいという方は記事を一読頂けると幸いです。
章構成
まず、本記事の章構成は以下の通りです。
- サーバー管理者の役割: 参加者のエンゲージメントとメンバーの増加率を安定化させる上での基本設計
- コミュニティを変える難しさ: 参加者のエンゲージメントによって醸成された特徴と、その特徴を簡単に変えてはいけない理由
- サーバーの雰囲気を維持する方法: モデレーションでの人的トラブルを未然に防ぐために
「1.サーバー管理者の役割: 参加者のエンゲージメントとメンバーの増加率を安定化させる上での基本設計」
本章では、Discordサーバー運営者が最初に考えるべき構想を説明していきます。
初期構想の段階で、管理者はトラブル対策が容易になるような仕組み作りを行いますが、その具体的な方法に迫っていきます。
もしあなたがセンスのある管理者であれば、問題に直面するたびに必要な対抗策を追加、アドオンできるかもしれません。
しかし、センスのある管理者がその場その場の継ぎ接ぎで「対抗策」をアドオンしていっても、参加者は変更があるたびに振り回されるため、参加者にとっての益はあんまりないのです。
そのため、ここではセンスの有りなしに関わらず、サーバーを最初に立ち上げる時に知っておいたほうが良い体系的な型、フォームを解説していきます。
例えば、違反・問題の通報フォームや相談窓口なんかは日々アドオンされていくよりかは、最初からあった方が良いに決まっていますので、そうした基礎知識を身に着けて頂きたいです。
「2.コミュニティを変える難しさ: 参加者のエンゲージメントによって醸成された特徴と、その特徴を簡単に変えてはいけない理由」
本章では、コミュニティの変更や改善にあたって難しくなるポイントや、そもそもコミュニティとは何なのかを解説します。
この記事を読んでいるあなたは優秀な管理者であり、自分が運営するコミュニティに必要な変更、改善箇所を誰よりも熟知しているかもしれません。
しかし、サーバーの参加者はそれらの変更を望んでいるでしょうか?あるいは、あなたが決めた変更を受け入れる心構えができているのでしょうか?
というのも、どれほどサーバーの中で管理者が偉い存在であったとしても、当の参加者が離れてしまえばコミュニティとしての意味はなくなるのです。
ここでは、管理者のアクションにより参加者の心が離れてしまうリスクと、その対策方法を解説していきます。
「3.サーバーの雰囲気を維持する方法: モデレーションでの人的トラブルを未然に防ぐために」
本章では、特に人間関係、または荒らしなど人的要因によるトラブルを未然に防ぐためのテクニックを紹介しています。
管理者やモデレーターになる人は、我こそは人間関係のトラブルにおいて正義と悪の分別を付けられる優秀な人間だ、と自負している人も多いでしょう。
しかし、残念ながらDiscordのモデレーションにおいては善悪を明確に断じるほど、却って余計な恨みを買ってしまうことが非常に多いです。
この記事では厄介なモデレーション・ケースの解決策までは踏み込みませんが、トラブルの未然防止や初期段階での抑え込みの方法を解説していきます。
特に、新規参加者でさえもリスク・トラブル要因とみなす考え方は、他のウェブサイトではなかなか紹介されないと思いますので、必見です。
1.サーバー管理者の役割: 参加者のエンゲージメントとメンバーの増加率を安定化させる上での基本設計
サーバー管理者は、サーバーの構築や運用、保守を行う役割があります。コミュニティの安定性を維持するためには、以下のことが必要です。
- コミュニティの安定性を維持するための適切な設計
- サーバー監視とトラブルシューティング
- コミュニティ参加者のニーズを理解し、サーバーのコンテンツやサポートを充実させる
簡単に言い換えれば、安定性を維持するための仕組みを作り、日々の状況を監視・現状把握することが重要になります。
1-Ⅰ.コミュニティの安定性を維持するための適切な設計
コミュニティ内での問題を早く検出し問題解決できるよう、体制を考える必要があります。
具体的には以下の内容を検討、作成します。
- 問題の定義付け、ルールの作成
- トラブルの解決方針、モデレーター・ガイドラインの作成
- 参加者からのフィードバックを得られる仕組み作り
a.問題の定義付け、ルールの作成
ルールの作り方の詳細は別記事で説明しているため、ここでは詳細は省略します。
ただ、どのようなサーバーでも想定される一般的な問題は、別のサーバーのルールを真似てしまってもある程度はカバーできるでしょう。
ルールを細かく作り込むよりも、まずは問題の定義付けとかその解決方針を考える方が重要です。
特にこの問題の定義付けは、サーバーで取り扱うコンテンツによって結果がかなり変わってきます。
例えば、政治的な議論をするサーバーであれば、意見の食い違いで口論が起きると想定されるため、議論と口論のボーダーラインを引くことがとても重要になります。
その他の例は、アダルトコンテンツを取り扱うサーバーで、投稿された画像などが児童ポルノに該当するかしないかで揉めることが想定されます。
もっとも、予め問題を想定しようにも「やってみないと分からない」という場合の方が多いと思います。
そのため、最初の段階で重く構えすぎてスタートできなくなるよりかは、サーバーを運営している中で「頻繁に起こる問題」に気付き、そこをルールなどで塞ぐ形を取ることもできます。
b.トラブルの解決方針、モデレーター・ガイドラインの作成
トラブルの解決方針、ところによってはモデレーター・ガイドラインとも呼ばれるものは、サーバー運営者サイドに立たないとあまり見る機会はないと思います。
また、そもそもモデレーター・ガイドラインを作成していないサーバー管理者の方が多いのではないでしょうか。
そのため、僭越ながら筆者が作成したガイドラインを参考のため載せておきます。
参考記事:モデレーター向けガイドラインの作成 (https://discord.com/safety/developing-moderator-guidelines)
c.参加者からのフィードバックを得られる仕組み作り
参加者からのフィードバックは、具体的なやり方は次項の「サーバーの監視とトラブルシューティング」「コミュニティ参加者のニーズを理解し、サーバーのコンテンツを提供すること」でも説明します。
ここではより一般的な説明に留めますが、参加者からのフィードバックとは要するに「ユーザーの声や意見」となります。
仮にサーバーの規模が小さければ、公開されたテキストチャンネルで直接参加者とやり取りしてフィードバックを得ることもできます。
しかし、サーバーの規模が100人、1000人と大きくなると、公開チャンネルでやり取りをしていては、色んな人が意見や要望、不平不満を言い始めて収集がつかなくなるリスクがあります。
そのため、参加者がサーバースタッフだけに意見、要望、通報などを投稿できるよう、専用の窓口を作っておくことが望ましいです。
1-Ⅱ.サーバーの監視とトラブルシューティング
サーバーの監視とトラブルシューティングは、サーバーの安定性を維持するために欠かせません。監視によって、問題が発生する前に対処することができます。
具体的には以下のようになります。
- モデレーターチームの作成
- 違反・問題の通報フォームの作成
- 自動モデレーションBOTの導入
a.モデレーターチームの作成
先ほど説明した「モデレーター・ガイドライン」は、モデレーターチームのルール、方針にあたります。
ここでは、その「モデレーター・ガイドライン」の方針に従ってモデレーションを実行する部隊、モデレーターチームを作成する意味と、その方法について述べます。
モデレーターチームを作成する意味
モデレーターチームを作る意味はごく単純ですが、管理者1人だけではサーバーの規模が膨らむにつれてモデレーションを行うことが難しくなるからです。
例えば、メンバーが引き起こす違反や問題を検出することや、解決策を考えること、説明を考えること、これら全てを管理者1人で行う場合、1人でカバーしきれるのは10~20人規模ぐらいまでと思われます。
つまり、サーバーの規模が成長することを前提にして運営するのであれば、モデレーションを担当するチームの設計と人材採用を最初の時点で想定しておいた方が良いのです。
モデレーターチームを作成(構成)する方法
モデレーターチームを作成するには、信頼できる参加者をモデレーターに採用することになります。
また、サーバー外にいる信頼のおける人物をモデレーターとしてスカウトするのも良いでしょう。
サーバー内からモデレーターを選ぶ場合は、Googleフォームなどを使用して申し込み形式にする方法があります。
この時、申込み者がモデレーターに相応しいかテストするため、簡単な設問を5~10個程度用意しておくと良いです。
参考記事:モデレーションチームの管理 (https://discord.com/safety/managing-moderation-teams)
b.違反・問題の通報フォームの作成
違反・問題の通報フォームはBOTで作成できます。
ここで、通報フォームという形を取らずとも、管理者やモデレーターへDMすることで通報するという仕組みも取れなくはないです。
しかし、モデレーター・チームの中で通報内容など情報共有することが困難となります。
そのため、わたしはDMによる通報をおすすめしておらず、必ずBOTを使った通報システムを作るようにしています。
通報フォームの作成には以下のBOTをおすすめします。
- ModMail
- ModMail by CHamburr (https://modmail.xyz/)
- Dragory’s Modmail Bot (https://github.com/dragory/modmailbot) ※セルフホスト
- Modmail by Kyb3r (https://github.com/kyb3r/modmail) ※セルフホスト
- Ticket
- TicketTool (https://tickettool.xyz/)
- Ticket (https://ticketsbot.net/)
参考記事:MODMAIL BOTの使用 (https://discord.com/safety/using-modmail-bots)
「※セルフホスト」と書かれているBOTは、BOTを起動するサーバー、マシンを自前で用意する必要があります。そのため、上級者にしかおすすめできません。
日本語圏のサーバーでは「b-1.TicketTool」の採用率が高いですが、「b-2.Ticket」などもチケットを閉じる理由を通達できたりと便利です。
なので、この「b-1.TicketTool」または「b-2.Ticket」2つから比較・検討することをおすすめします。
自動モデレーションの導入
自動モデレーションには、Discordアプリに標準搭載された機能によるものと、公開されたBOTを使用するものに大きく二分されます。
標準機能にせよ公開BOTにせよ、両方のケースで共通して言えることは以下の通りです。
- 自動モデレーションによりある程度のモデレーション作業が機械化・自動化されるため、モデレーターチームの負担が軽減される
- 自動モデレーションは科学的・数式的に違反を検出・処罰するため、客観性・中立性・公平性が最大限に高い
そして、標準機能、公開BOTそれぞれの自動モデレーション方法は別記事にて紹介しているため、リンクを置かせて頂きます。
標準機能
DiscordのAutomod機能とは?標準のAutomodを使いこなす方法
【荒らし対策】Discord標準機能によるユーザー認証
公開BOT
Carl-botの使い方|リアクションロールと荒らし対策【Discord】
1-Ⅲ.コミュニティ参加者のニーズを理解し、サーバーのコンテンツやサポートを充実させる
コミュニティ参加者のニーズを理解し、サーバーのコンテンツを提供することは、コミュニティの安定性を維持するために重要です。例えば、コミュニティ参加者が求める情報を提供することが挙げられます。
具体的には以下のようになります。
- 主要コンテンツの選定
- テキストチャンネルの設置
- 要望フォームの作成
コミュニティ参加者とのコミュニケーションを円滑に行うこと
コミュニティ参加者とのコミュニケーションを円滑に行うことは、コミュニティの安定性を維持するために欠かせません。例えば、コミュニティ参加者からのフィードバックを収集することが挙げられます。
具体的には以下のやり方があります。
- アンケートの実施
- 質問・問い合わせチケットの設置
- 公開チャンネルでの直接的なコミュニケーション
以上のことを実践することで、サーバー管理者はコミュニティの安定性を維持することができます。
2.コミュニティを変える難しさ: 参加者のエンゲージメントによって醸成された特徴と、その特徴を簡単に変えてはいけない理由
- コミュニティとは何か
- コミュニティの特徴付けとは何か
- 独裁的なコミュニティ運営の限界
2-Ⅰ.コミュニティとは何か?
コミュニティとは、共通の目的や関心を持った人々が集まって形成される社会集団のことです。
その社会集団は、ある種生き物のような形態をしているとも言えます。
なので、管理者がどれほどコミュニティを何らかの意図で変えたいと思っていても、そこに参加者がついてきてくれなければうまくいくことはありません。
逆に言えば、如何に独裁的な管理者がコミュニティを思い通りに変えようとしていても、参加者がその変化に賛同しない限り、結果的には誰も喋らなくなって水疱と帰すわけです。
ここから先は、有料記事となります。 本記事投稿、最終更新時点2024年1月10日ではドラフト版のため、特別価格で提供! 以後、内容がアップデートされる度に値上げするため、買うなら早めがお得ですよ。